山のこと
FIKAはご存じのとおり原木椎茸の路地栽培をしています。原木に使う木は主にクヌギ、ミズナラなどの広葉樹です。FIKAは独自の原木山を所有していませんので、立木を伐る伐採権を他者より買い求め原木を山から伐り出します。
近年、椎茸生産者の高齢化、後継者不足、市場価格の低迷などによりその生産数は年々減少に傾いています。これにより原木山が荒れる事態が少なからず起きています。そしてここで大きな問題となるのが里山の保持育成です。
元来里山は人間が長い歳月をかけて作りだしてきた人工的な植生です。つい100年前までは各家庭の煮炊き、暖房などは全て薪によって賄われていました。しかし文化が変化するうちに次第にそれら燃料は近代的なガス、石油に取って代わられ、次第に世の中の表舞台から姿を消していきました。用の無くなった木々たちは伐られることもなく年々大きく太くなりました。
さてこれは里山特有の事例です。元来里山は定期的に木を伐採し地上部の更新を何十年かのサイクルでしてきました。杉等の針葉樹は地上部の伐採をしてしまうと根まで枯れてしまいますが、広葉樹や照葉樹などの木々はある程度根の部分がしっかりしていれば再度新芽が出て最終的には元通りに再生します。この再生は別の意味で木々の免疫力を再度高め、害虫や病気などから自分たちを守る重要なファクターに実はなっているのです。通常の考え方ですと木を伐ったら禿山になって自然破壊になると思われるかもしれませんが、里山に関してはその逆であるのです。
そして木の更新が行われなくなった里山は地上部の老齢化による免疫力の低下により次々と枯れていくのです。一度ダメになった里山を再度再生するにはそれこそ何百年の時間を必要とします。
人が手を入れてはいけない原生林。そして手を入れるべき里山。いまFIKAは村内の有志と共同で里山の再生事業を始めています。里山の再生はひいてはその下部にある畑、田、川、海に豊穣をもたらします。また獣たちにも健全な餌の供給源となり、わざわざ獣たちが里に降りてこないでも良い環境を作り出します。
筋道を立てた上で木を伐る。それは時に”木を植える行為”と同等の尊さにもなります。
実は我々人間も自然の一翼を担っているのです。